大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和47年(オ)114号 判決

主文

理由

上告人代理人豊島武夫の上告理由第一点について。

賃貸人が賃料債務の不履行を理由として賃貸借契約を解除するには、賃貸人に対して解除の意思表示をすれば足り、さらに賃貸借契約上の債務の連帯保証人に対し解除の意思表示をしなければならないものではない。したがつて、これと同旨の原審の判断は、正当であつて、原判決に所論の違法は認められない。

同第二点及び第三点について。

競買人の競買申出は、訴訟行為に準ずべきものであり、これに基づいてする裁判所の競落許可決定は裁判であるから、その違法を主張する競落許可決定を受けた最高価競買人は、右競売手続及び競落許可決定につき不服があるときは、民訴法六七一条、六七二条等によつて異議を申し立て、及び同法六八〇条により即時抗告を申し立てるべきであり、民法五六八条、五六六条により救済を求められる特別の場合を除き、競売手続及び競落許可決定の違法を右手続によらず別訴で主張し、競売手続及び競落許可決定の違法無効を主張することは許されないというべきである(最高裁昭和四〇年(オ)第六九九号同四三年二月九日第二小法廷判決・民集二二巻二号一〇八頁参照)。そうだとすれば、競売について民法九五条の適用があることを前提とし、上告人らのした本件競買の申出は無効であるとの所論の理由のないことは明らかであつて、上告人らの所論の抗弁を排斥した原審の判断は正当であり、原判決には所論の違法はなく、所論中、右違法のあることを前提として違憲をいう部分は、その前提を欠く。論旨第三点において引用の各判決は、本件とは事案を異にし、本件に適切でない。

同第四点について。

所論は、原審での主張・判断を経ない事実を前提として、原判決に所論の違法があるというものであつて理由がない。

同第五点について。

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決の挙示する証拠に照らして首肯することができ、その過程に所論の違法は認められない。

同第六点及び第一六点について。

被上告人の主張する本訴請求の趣旨、原因及び原判文に徴すれば、被上告人の本訴が本件土地所有権に基づく土地明渡及び土地所有権侵害による損害賠償の各請求であり、原審が被上告人の右請求を認容したものであることが明らかであつて、原判決に所論の違法は認められない。

同第七点及び第八点について。

所論の点に関する原審の判断は、首肯しえないものではなく、その過程に所論の違法は認められない。

同第九点について。

原判文によれば、原審は、上告人らが本件建物の所有権を取得し、その敷地である本件土地の不法占有を開始した日をもつて所論の金員給付の起算日である旨を認定判示した趣旨が窺われるから、原判決に所論の違法はない。

同第一〇点及び第一一点について。

原審が適法に認定した事実関係のもとにおいては、所論の賃借権譲渡許可の申立てが、本訴につき終局判決をすることを妨げる根拠とならない旨の原審の判断は、正当として是認することができる。所論は、ひつきよう、原判文を正解せずして原審に所論の違法があるというに帰し、理由がない。

同第一二点について。

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決の挙示する証拠に照らして、首肯することができ、その過程に所論の違法はない。

同第一三点について。

原審が適法に認定した事実関係のもとにおいては、被上告人の上告人らに対する本訴請求が権利の濫用とは認められないとした原審の判断は、是認することができ、その過程に所論の違法は認められない。

同第一四点について。

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決の挙示する証拠に照らして、是認することができ、その過程に所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、原審の認定にそわない事実を主張し、原審が適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するにすぎない。

同第一五点について。

所論は、原審での主張・判断を経ない事実を主張し原判決に所論の違法があるというのであり、また、原審が適法にした証拠の取捨判断に所論の違法があるというのであつて、いずれも理由がない。

同第一七点について。

原判文によれば、上告人両名は、昭和四三年一二月二一日、競落により前所有者中川二郎から本件建物の所有権を取得し、現にこれを所有していることを自白したことが認められる。そうすると、所論は、原審での主張・判断を経ない事実を主張して、原審に所論の違法があるということに帰するから、理由がない。

以上各論旨は、いずれも理由がなく、採用することができない。

(裁判長裁判官 藤林益三 裁判官 大隅健一郎 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一 裁判官 岸上康夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例